世界最大の治験情報サイト「ClinicalTrials.gov」から日本でおこなわれているがんの治験(臨床試験)をリンクしました。

もしかして、白血病では? その1 

白血病

もしかして、白血病では?その1  愛知県がんセンター名誉総長 大野 竜三

当ブログを訪れる方々の検索ワードは、小児がん系の「小児白血病 きっかけ 初期症状 紫斑   あざ 出血 治療方法」などの用語が比較的多い傾向です。白血病の専門家である愛知県がんセンター名誉総長 大野竜三先生に画像も交えてご解説いただきました。
また、画像は太田西の内病院 松田信 先生の撮影画像をご提供いただきました。
「もしかして、白血病なのでは?」という不安や疑問、初期症状などにお応えできれば幸いです。

小児がんで一番発症率の高い白血病

小児がんの中で、いちばん多いのが白血病です。国立がん研究センターの最新統計によれば、2018年に15歳未満で発病した白血病患者さんは760名でした。うち489名が男の子であり、6:4で男の子の方が女の子より罹りやすい病気のようです。この年の15歳未満の人口は1,541万人強でしたから、10万人当たり5名近い罹患率になります。この年齢層の全がん患者数は2,059名であり、白血病は37%ちかくを占めて一番多いことから、映画、テレビドラマや新聞などで、しばしば取り上げられます。

このように、白血病は小児ではいちばん多いがんであることもあって、なかなか治りにくい症状が続いたりすると、もしや白血病では?と心配されることはよくあると思います。そんなときのために、白血病の初期症状を解説しながら、受診の目安をお話ししようと思います。

小児白血病 受診の目安

白血病は血液のがんといわれますが、正確には、血液中を流れている血球のがんです。血球は骨髄の中で造られ、白血球、赤血球、血小板の3系統からなっています。どの系統もがん化しますが、一番多いのは白血球ががん化する場合です。

怪我をした傷が膿むと白黄色のうみが出てきますが、このうみを顕微鏡でみますと、白血球の塊であることがわかります。昔は、白血病になったら為す術がありませんでしたから、がん化した白血球がどんどん増え、血液が白桃色になるほどでした。そのため、白い血の病気、すなわち白血病と名付けられたのです。

血球を造る骨髄の中でがん化した血球がどんどん増えてゆきますと、骨髄腔はがん化した細胞で占拠されて、正常血球の生成が阻害されます。その結果、正常な白血球(好中球やリンパ球)(図1)、赤血球と血小板が減っていき、それによる症状が現れます。

正常な白血球、特に白血球の7割前後を占める好中球が減りますと、感染症に罹りやすくなったり、熱がなかなか下がらず、風邪が治りにくく長引いたりします。そのようなときには、今では街の小さな診療所でも外注で血球計算ができますから、ぜひ受診して血液検査をしてもらいましょう。そうすれば、血球数は翌日までにはわかることが普通です。

骨髄の中でがん化した白血球が末梢血中に出てきたら、白血球数が多くなってきますから、白血病を疑うことになります。しかし、白血病の初期では、それほど増えておらず、むしろ減っていたりすることもありますから、血液像(白血球分画ともいう)も検査することが必要です。白血病の血液像は、正常の好中球やリンパ球の%が減り、通常は認めない白血病細胞(芽球ともいう)(図2)や幼若白血球である骨髄球などを認めるのが普通です。

現在は、血球計算は全て自動機器で行われ、血液像も自動で判別していますが、全ての医師が血液像までオーダーしているとは限りません。そのため、白血球数の多くない初期の白血病の診断が遅れることも、ままありますから、注意が必要です。
骨髄中での赤血球の生成が阻害され、赤血球が減ってくると、貧血症状が現れます。顔色が悪くなったり、疲れやすくなったり、走ったり階段を登ったりするときに息切れがするようになります。
貧血の検査は、
・赤血球の数
・赤血球の中に含まれるヘモグロビン濃度
・赤血球の体積を示すヘマトクリット
この三つで表され、白血病の場合は、これらが全て低値を示していることが普通です。
なお、この三つから計算したMCV, MCH, MCHCという赤血球指数も自動的に計算されて報告書に記載されていることが多いですが、白血病の貧血は、これらの3指数が基準値内であることが普通です。

小児白血病 紫斑(あざ)、点状出血、出血、鼻血

骨髄中での血小板の生成が阻害されて、その数が減少しますと、出血症状が出てきます。よく見るのが、紫斑(あざ)と多数の赤い斑点として認める点状出血です。これらは下肢に出ることが多いのが特徴です。それ以外にも、歯磨き後に歯茎から出血したり、鼻血が出たりすることもあります。

このような症状が見られたら、かかりつけ医で血球検査をしていただきましょう。

白血球の場合もそうですが、白血病の初期である場合、赤血球も血小板がほとんど減っていないことがありますから、赤血球や血小板が減っていないからといって油断はできません。血液像での確認が必要です。

これらの症状以外にも、リンパ節が腫れたり、脾臓が腫れたりすることがありますが、ともに、白血病がある程度進行した場合に認める症状です。最近では、街の小さな診療所でも外注で血球計算ができるので、白血球、赤血球、血小板の異常が早くわかりますから、これらの症状を認めるほど進行する前に、白血病と診断されるのが普通です。

多くのがんがそうであるように、白血病の場合も、早期診断・早期治療は予後を改善します。疑わしい症状があったら、かかりつけ医で血球計算をしていただきましょう。

もしかして、白血病では?その2 つづく

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