もしかして、白血病では? その2
もしかして、白血病では?その2 愛知県がんセンター名誉総長 大野 竜三
「もしかして、白血病では? その1」は、こちらから
白血病では?受診の目安
元気に走り廻ることが多い子供さんは、ときどき鼻血をだしたり、身体のどこかにあざができたりすることがよくあります。それが何度も続いたりすると、もしや白血病では?と心配になることがあるかと思います。そんなときに、以下のようなことがあったら受診しましょうという目安を、お話しします。
鼻血
まず、鼻血が片側だけから出る場合は、ほぼ大丈夫です。利き腕の側から出ることが普通ですが、これは、多くの場合、子どもさんが無意識のうちに利き腕の指を鼻孔に入れて、ほじくるからです。鼻中隔粘膜の下端部に毛細血管が集まった部位があり、ここから鼻血がでることが多いので、わざわざキーゼルバッハ部位と名前が付けられています。
片側からの鼻血は、出血側の鼻の下の部分を、外側から内側の鼻中隔部に向かって5~6分間圧し続けると止血できます。鼻血がひどいときは、ティッシュやガーゼを鼻腔に詰めるのもよいですが、この場合、詰めたものを抜くときに、折角血が固まって止血できた部位が剥がれて再出血することがありますから、要注意です。
鼻血が両側から出たりしたときに、同時に、下記のようなあざ(紫斑)や点状の赤い斑点があれば、直ぐに受診しましょう。
あざ(紫斑)
あざ(紫斑)は、身体をどこかにぶつけたりすればよくできますが、これは当たった部位の皮下の毛細血管が破れて出血してできるのです。単純性紫斑病とか老人性紫斑病といって、思い当たることがないのに出来ていることもあり、心配されることもあると思いますが、やはり、気付かないうちに、どこかに打ちつけていたことによりできるのが普通です。しかし、白血病や免疫性血小板減少症などでは、3種ある血球の一つである血小板の数が減っていると、破れた毛細血管の破綻部に栓をすることができなくなり、血がにじみ出ますから、あざができやすくなります。
あざ(紫斑)出血斑 点状出血斑
あざを見つけられたときには、まず下肢を見てください。立位でいると血が下肢に溜まりますから、下肢に紫斑や出血斑がでやすくなるからです。注目していただきたいのが、点状出血斑とよばれる小さな赤い点状の斑点です。下肢、特に下腿に多数見られることが一般的です。赤い斑点を人差し指の掌でそっと撫でてみて、ボコボコと触れるような感じがしたら、それは点状出血ではなく皮疹のことが多いですから、安心しても大丈夫です。皮疹は圧迫すると消えますが、出血斑は圧迫しても消えませんから、透明な定規のようなもので圧迫してみてください。あざだけしかなく、下肢などに点状出血斑がない場合は、まず心配ありません。
血小板減少時に見られる点状出血斑と紫斑 <SaneVax, Inc. 撮影(一部改変>
出血
もし、赤い斑点部をそっと撫でても何も触れず、同時に、最近歯を磨くと出血したり、鼻血がでやすかったりするのであれば、直ぐに受診して血小板数を検査してもらいましょう。女性では、月経血がいつもより多く出たりします。なお、寝てばかりいる場合には、紫斑や点状出血は背中に出ますから、そこを見ましょう。
血小板の数値
血小板数の正常値は、おおよそ15万~35万/μLですが、紫斑や点状出血斑などの出血症状が現れるのは、5万/μL以下に減少している場合です。したがって、これらが出たときは、相当進行した状態にありますから、直ぐに受診しましょう。「もしかして白血病では? その1」でも書きましたが、今では街の小さな診療所でも外注で血球計算ができますから、受診するのはかかりつけ医で結構です。血小板数が正常であったら心配無用です。単純性紫斑病などでは、血小板は減っていないのが普通です。
血友病などの先天性の病気があって血が止まりにくい場合は、多くは、膝や肘の関節部に出血して関節が腫れたり、筋肉内に出血して大きく膨らんだあざになったりします。血小板減少症で見られる鼻血、歯茎からの出血、紫斑や点状出血などは、あまり見られないのが一般的です。したがって、関節出血や筋肉内出血がなければ、あざや鼻血が少々でやすいからといって、血友病などを心配する必要はありません。
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